杉本光洋
【西山先輩の怖い話】第二夜 タクシー樹海に向かう
2023.08.13
僕にオクトパスホールドをかけながら、西山先輩は寺岡と吉田に話かけるように語りはじめた、、、。
暑い8月の中旬。
終電が無くなった午前0時過ぎころに、
人の気配がない暗い路地でタクシーに乗車した子連れの女性、
年代は三十歳前半と言った所だろうか。
連れている子供は4~5才ほどの男の子だ。
嫌な予感がする。
が、
乗車してもらった以上行き先を聞かなければならない。
運転手「お客さん、どちら、、まで?」
少し間があったあと
女性「富士の、、樹海、、まで。」
かぼそい声で女性は言った
やっぱりな、運転手はそう思った。
樹海で彼女達親子が何をしようとしているのかそれは分からない、ただ彼女達は危険だ。
ドライバーの長年の経験と感が
それを告げているのだ、
これはヤバいとおもった運転手はこう切り返した。
運転手「東京から富士の樹海までだと10万じゃあきかないよ~、違う手段にしないかい?新幹線とか。とりあえず今日はやめておいた方が、、、」
と、運転手が言葉を最後まで言う前に女性は声を荒げて言った
女性「今日じゃ無きゃダメなんです!!!」
苦虫を噛む運転手
静まる車内
と、今まで静観していた子供がポツリと言った。
子供「僕はそんな所に行きたくないなぁ、お家でいつもの様にゆっくりしたいよ」
女性「、、、ごめんねぇ」そうして顔をふせる。
運転手「何があっかのかは分からないケド、察する事は出来る。つらい事が泣けばいいさ、だけど泣いた後は次の事に進めばいいんだよ。」
女性「‥‥えんえんえん(涙)」
子供「ママ?泣いてるの?涙でてないよ?」
運転手「ママはつらい事があったのさ、でもそれも時間が解決してくれる。さぁお家に帰ろう。」
そういって女性から住所を聞き出した運転手は自宅まで送る
女性「、、、どうもお見苦しい所をお見せしてしまいました。」
運転手「気にはしていません、でも子供の為には強くならないと行けない所もあるかも知れませんね、深夜割増で3万円になります。」
女性「、、少々持ち合わせが足りないので家に取りにいって来ますね、、。」
そういってタクシーを降りる親子。
しかし5分が過ぎ、10分が過ぎても女性は戻ってこない。おかしいと思った運転手は家のチャイムを押した。
ガチャ
女性B「はい?」
運転手「こんばんは、今妹さんかな?が、タクシーでこちらに帰られて、お代をとりにご自宅に入られたので、、」
女性B「あぁ、妹は、、実は先日、シクシク、事故でなく、、、」
運転手「ぶーーーーーー!!!!✕✕」
両手をクロスさせる運転手。
女性B「!?!」
運転手「そんな事ありませーーん、
ずっと会話してましたー、
なんなら二足歩行で歩いてました足ついてますぅー。
てか、本当に幽霊とかいる?
いないよね?
だってさー
絶対生きてるんだから!
樹海とか言って
恐怖割り増しにさせて
不安あおってたけどさ、
最初から家に帰るのが目的で乗って
終電乗り遅れてタクシーのったのはいいけど
割り増しが高いからって芝居して
踏み倒そうとしちゃあ、、ダメダメ!!」
西山先輩「ベテランドライバーの嫌な予感は当たっていたのだ!!」
…
僕「てか、その運転手さんて西山先輩のお父さんですよね?こないだ昔タクシーやってたって言ってたし、口調がそのままだしね」
西山先輩「おだまりっ!」
僕「ぐえっ、ほ、本当にあった、くだらない話やんけ、、、、。」
そうして何も怖くない、ただの体験談が今宵も幕を閉じようとしていた。
寺岡「‥宿題やろうよ」
その一言が部屋に響いた。完。